投稿者: TATSUNOM

一人親方あんしん労災 – 浴室の塗装中に有機溶剤中毒に

一人親方あんしん労災 – 有害物等との接触の労災事例

浴室の塗装中に有機溶剤中毒に


発生状況

本件労働災害は、個人住宅の改修工事の一環として行われた吹き付け塗装作業中に発生したものである。当日は下請けの塗装店に所属する被災者を含めた2人が作業を担当しており、午後の浴室部分の塗装に関しては被災者が1人で行うことになった。

被災者はまず塗装のいらない部分を養生し、浴室の隙間はすべてビニールとテープで覆ってしまった。その後有機溶剤キシレン5~10%・アセトン5~10%・トルエン20~30%・酢酸エチル5~10%を含有する下塗りシーラー剤を塗布した。

塗装をはじめてから1時間ほど経過したとき、被災者は塗料の臭いがきついと話しながら一度作業場所を離れた。このとき被災者は有機溶剤に酔っており、目も赤く充血していた。10分ほど休憩したのち、被災者は再び作業現場へ戻っていった。

その後1時間経っても被災者が戻ってこないことに心配した同僚が浴室を覗くと、被災者は現場で倒れている状態で発見された。同僚は現場から引きずるように被災者を救出したが、このときすでに被災者の意識はなく同僚も気分が悪くなってしまっていた。

原因・対策

本件労働災害の原因は、浴室の窓など隙間に養生テープを貼って通気性がほとんどない状態で作業を行ったことや、有機溶剤を使用するにもかかわらず防毒マスクを着用していなかったことなどが起因している。

このような災害の対策として、有機溶剤の使用量や作業場所の広さに合った適切な換気装置を使用する必要がある。また呼吸用保護具の着用を徹底する必要がある。

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一人親方あんしん労災 – 井戸地下室で酸素欠乏症

一人親方あんしん労災 – 有害物等との接触の労災事例

井戸地下室で酸素欠乏症


発生状況

本件労働災害は、ゴルフ場に設置された井戸のバルブを調節する作業中に発生したものである。この作業はゴルフ場の給配水関係を統括し管理している者と、施工会社の配水工事における責任者の2名で行われていた。

災害発生当日はゴルフ場の管理者が先に井戸地下室に入りバルブ調節作業を開始し、3時間後に工事責任者が立ち入った。しかしその後しばらくしても2名が戻らないため施工会社の作業員が様子を見に行ったところ、2名とも地下室で倒れていることが確認された。

作業員はすぐに事務所に連絡し、その場にいた同僚3名を連れて救助にあたった。しかし同僚の1名が外部に無線連絡で状況を伝えている際に、第一発見者の作業員は特別な装備をしないまま事故現場に立ち入ってしまった。

その後他の作業員がゴムホースを加えながら救助に入ったところ、管理者、工事責任者と作業員の3名は死亡している状態で発見された。

原因・対策

本件労災の原因は、井戸地下室という空気循環の難しい現場で酸素濃度の測定や換気を行わず、保護具も着用せずに作業を実施したことが挙げられる。また酸素欠乏危険作業主任者による正しい指揮が行われなかったことにより、救助者の酸素欠乏に関する知識が不足していたことも挙げられる。

このような災害の対策として、地下室のような酸素欠乏のおそれのある現場では必ず作業開始前に酸素濃度の測定や換気などを怠らないことが重要である。また酸素欠乏危険作業主任者を定め、作業の指揮や安全管理を徹底する必要がある。

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一人親方あんしん労災 – ダイバー2名が遭難

一人親方あんしん労災 – 有害物等との接触の労災事例

ダイバー2名が遭難


発生状況

本件労働災害は、ライトブイの設置に伴う潜水業務中に発生したものである。災害発生当日は午前9時ごろに2名のダイバーが水深45m地点まで潜水艦で潜った。海底には10分間滞在し、その後15分かけて浮上していく予定であった。

ところが浮上予定時刻になっても2名が水上に現れないため、待機していた別のダイバーが9時40分に事情調査のため潜水した。しかし2名を見つけることはできず10分後に浮上した。

潜水指揮者は緊急事態とみなし潜水艦を警戒船に近づけ、報告および潜水による捜索を行なったが30分経過しても発見することはできなかった。その数時間後、2名は現場からかなり離れた沖で見つかった。

潜水作業は通常2名のダイバーがバディを組んで行うため2名双方が同時に命の危険にさらされる事態は少ない。今回の場合も1名の所持する水中カメラには作業の途中経過が写されていたため、もう1名に窒素酔いなどの異常が発生し、それにパニックを起こしもう1人も遭難してしまったのではないかと考えられる。

原因・対策

本件労災の原因は、空気潜水の場合水深30mほどから窒素酔いが発生しやすくなるにも関わらず、特別な防止策を取らなかったことが挙げられる。またカメラを所持していなかったダイバーは潜水が久々であり窒素酔いを起こしやすい状態であったことも起因している。

このような災害の対策として、高圧タンクでダイバーに作業場所より高い圧を加えることによって体制をテストする方法や、深い潜水の前に何度か訓練として潜って体を慣らしておくといった窒素酔いを防ぐ方法をしっかりと取っておくことが挙げられる。

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一人親方あんしん労災 – 未固定の足場に踏み入り墜落

一人親方あんしん労災 – 墜落、転落の労災事例

未固定の足場に踏み入り墜落


発生状況

本件労働災害は、コンサート等を行うためのホールを建築する工事中に発生したものである。被災者は屋根の梁部分に該当する鉄骨の工事や小ホールの躯体仕上げを担当していた。災害発生当時は小ホールの作業床を組み立てていた。

今回足場はホールの4、5階に枠組み足場を4段組み、隙間に単管を起き足場床を支えた。そして鋼製足場板を敷いてステージの形にするというものであった。災害発生当日は鋼製足場板を敷き詰め緊結させる予定だった。

被災者は現場にいた職長と作業の確認をした後安全帯を取り付けるためのロープをくぐり、鋼製足場板が敷き詰められた箇所へ足を踏み入れた。

しかし緊結が未完了な部分があり、被災者はその箇所を踏み込んでしまったため足場板がシーソーのように単管を支点に大きく動き、そのまま墜落してしまった。このとき被災者は安全帯の着用を怠っていた。

原因・対策

本件労災の原因は、鋼製足場をすぐに緊結していなかったことや固定されていないにも関わらず被災者が足を踏み入れたことが挙げられる。また墜落の可能性がある足場での作業で安全帯を着用していなかったことなどが挙げられる。

このような災害の対策として、足場は固定するまで踏み入らないよう明確な表示をすることや、敷き詰めた後すぐに固定することが重要である。また足元が不安定な足場などでは安全帯の着用を徹底し、足場を設置する際にはその計画を工事が始まる30日前までに労働基準監督署に届け出る必要がある。

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一人親方あんしん労災 – 薬剤が混ざり二酸化塩素中毒に

一人親方あんしん労災 – 有害物等との接触の労災事例

有機溶剤の蒸気を吸い込み倒れる


発生状況

本件労働災害は、木造家屋の洗浄中に発生したものである。家屋内の木造部分にある汚れを落とした後、日焼けやカビを取り除き仕上げに薬剤を塗布するというものであった。

汚れ落としにはフッ化水素を含んだ酸性の水溶液を使用し、仕上げの薬剤には過酸化水素水溶液と亜塩素酸ナトリウム水溶液を混ぜたものを使用した。作業場所は6畳間で、南側に位置する扉を開けていたものの風は通っていなかった。

始めに柱や天井など木造部分に汚れ落としを塗布したのち、乾燥したら仕上げの薬剤を上塗りすることになっていた。この時薬剤を水で薄めて使用する予定だったが、濃い方がより高い効果を得られると考えた被災者は薬剤を原液のまま塗り始めた。この時被災者は保護マスクを着用していなかった。

作業開始からしばらくして、喉に違和感を覚えた被災者は作業を中断し、休憩を取ることにした。しかし数分経っても息苦しさが緩和されないため、病院で検査したところ二酸化塩素中毒であることが確認された。

原因・対策

本件労災の原因は、1つめの薬剤の乾きが完全でないうちに別の薬剤を塗ったことで亜塩素酸ナトリウムを発生させたことや、通気性の悪い場所で作業したことなどが挙げられる。また呼吸用保護マスクを未着用であったことや薬剤を原液のまま塗布したことも起因している。

このような災害の対策として、薬剤を扱う際には必ず使用量や使用方法を守る必要がある。また必ず十分な換気を行い呼吸用保護具も適切に使用することが重要である。

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