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建築/建設業界の労災事例

本サイトで紹介している労災事例は、実際にあった労災事故を掲載しておりますが、当協会によせられた労災事例ではありません。予めご了承ください。

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一人親方あんしん労災 – クーラーの配線工事中に感電した労災事故

一人親方あんしん労災 – 感電の労災事例

クーラーの配線工事中に感電した労災事故


発生状況

本件労働災害は、工場の窓枠の下方拡張工事を行うため、窓枠の約20cm下に敷設されていたクーラーの電源用ケーブルを徹去し、これより約1m下に新たに電源用の配管を敷設する工事において発生した。

新設の電源用配管が敷設された後、既設電線と新設電線との切替えを行うため、被災者が枠組み足場と加工機械の間に足をかけて、窓と窓との間の壁面に設けられた分岐箱内部の既設電線を、200V電気を切らずに、そのまま電気工事用ペンチで切断しようとした時感電したものである。

被災時の被災者の服装等は、ゴム底の安全靴、長袖の作業服を着用し、手は素手のままであった。使用していたペンチは握りの部分がビニールで絶縁被覆された絶縁柄ペンチであったが、被覆が損傷し、1~4mmの穴が4個所認められた。さらに災害発生当日の状況は、気温が27℃でかなり蒸し暑く、朝からの作業で被災者の作業服は発汗によりかなり湿った状態であった。なお被災者は、在職1年で電気工事士の資格は有していなかった。

原因・対策

労働災害の原因は、停電をしないで活線のまま配線の切断作業をしたこと。
2つ目は活線作業に伴う危険性について事前に検討を行わなかったこと。また、作業手順を定めないまま作業に着手してしまったこと。
3番目は、活線作業を行うにもかかわらず、絶縁用保護具を使用せずに素手のままで作業を開始したこと。
4番目はペンチの絶縁被覆が損傷していたこと。また、その絶縁性能について事前の確認をしていなかったこと。
5番目は、作業服が汗で湿り、接触抵抗が低下してしまっていたこと。
6番目は、作業者に感電の危険性について十分理解させていなかったことが挙げられた。

再発防止対策は、電気工事は可能なかぎり停電してから作業を行うこと。この際できるだけ元スイッチを切ることにより、作業場所の周囲に充電部分が残らないようにし、必要な場合は電力会社側開閉器の操作を開閉器操作申込書により電力会社に依頼する。また、停電作業中に通電されないよう、停電に用いたスイッチに通電禁止の表示等の措置をする。
2つ目は、活線作業を行う際は、あらかじめ作業に伴う危険性を検討のうえ作業手順を作成し、その手順を守ること。また、万一に備え、単独作業を避けるとともに、作業者全員に救急処置の訓練を実施しておくこと。
3番目は、活線作業においては、たとえ活線作業用器具を用いる場合であっても、電気用ゴム手袋等の絶縁用保護具を併用することと、接近して感電する恐れのある充電部分には絶縁シート等を装着すること。
4番目は、活線作業用器具、絶縁用保護具等は定期的に絶縁性能を検査するとともに、必ず使用前に点険を実施すること。
5番目は、発汗、雨などにより身体が濡れると身体や衣服の抵抗が著しく低下するため、夏場については低圧電気による感電死亡災害が多発する傾向があるので、普段にも増して絶縁用保護具の着用を徹底すること。また、このような電気の特性および危険性ならびに安全対策について、作業員全員に十分に教育を実施すること。

一人親方あんしん労災 – 雨天時のアーク溶接作業で感電した災害

一人親方あんしん労災 – 感電の労災事例

雨天時のアーク溶接作業で感電した災害


発生状況

本件の災害は、建設現場で、枠組み足場に腰を下ろした状態で、組み上げられた鉄筋にラスという金網状のコンクリート打設用下地に、交流アーク溶接機を用いて取り付ける作業を行っている時に発生した。

作業をしている途中で雨が降り出したため、同僚と2人で作業場所をシートで覆う作業をした、この際、雨で被災者の作業衣がずぶ濡れの状態となってしまった。その後、溶接作業を続行して、作業終了予定時刻が近づいてきたため、同僚が声をかけようと振り返ったところ、被災者が足場板の上に仰向けに倒れ、その右手付近に溶接棒ホルダーが溶接棒の取り付けられたままころがっているのを発見したもの。

災害調査の結果、被災者の体には,かなりの高電流が流れたことを示すような火傷があり、、着用していた皮手袋と作業衣にいずれも電流によるものと思われる焼け焦げがあることが判明した。この状況から判断すると、被災者が枠組み足場に腰を下ろした状態で、胸を枠組み足場の筋かいにもたれ掛けた状態で溶接作業を行っていた際に、溶接棒に触れて感電したものと思われる。

また、使用していた交流アーク溶接機には自動電撃防止装置が内蔵されており、試験の結果、その機能は、何も異常はなかった。ただし、この自動電撃防止装置は高抵抗始動型のもので、溶接をしていない状態では溶接棒と溶接母材等アース側との間の出力電圧は17Vであるが、溶接棒が母材に触れるなどして溶接棒とアース側との間の電気抵抗が当該自動電撃防止装置の始動感度である327Ω以下になると、出力電圧が80Vに上昇し、逆に溶接棒が母材から離れてアーク電流が減少すると約1秒後に17Vに切り替わる機能になっていることが分かった。

原因・対策

災害の原因は、感電による生命の危険は、主に体内を流れる電流の大きさと時間に左右されるので200mAの電流が流れれば、約2秒で死に至ることが一般的に知られている。

一方、体内を流れる電流の大きさは、人体や着衣の電気抵抗の大きさで決まるので、通常の着衣が乾燥した状態では、人体抵抗は10,000Ω程度であるが、着衣が濡れるとこの25分の1以下に減少してしまい、また皮手袋や衣服の抵抗は無視できるくらい小さくなる。災害発生時の被災者の体の抵抗は水に濡れて327Ω以下となっていたため、溶接棒に触れた瞬間、出力電圧が80Vとなり、250mA程度以上の電流が体内を流れて死に至ったものと思われる。

アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等の業務を行う作業者には、事前に特別教育を行わなければならないことになっていたが、被災者はこれを受けておらず、アーク溶接の着衣が濡れたことでの危険性、自動電撃防止装置の特徴について十分な知識を持っていなかったことも災害の原因の大きな要因だと考えられる。

災害防止には、自動電撃防止装置は、溶接作業場所の環境、母材の状態等に応じて、低抵抗始動型、2オーム未満のものと高抵抗始動型で2~500Ωのものとを使い分けることとして、降雨、雷の発生等の天候による作業環境の大幅な変化にも配慮した作業工程を作成するとともに、的確な指示が行えるよう安全管理体制を整備することにした。

更に、交流アーク溶接作業において、作業場所が普段の体勢と違うときは、溶接棒を溶接棒ホルダーから外すことにさせた。最後に作業に当たるものには、特別教育はじめ必要な教育を行うことにして対策をした。

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