一人親方あんしん労災 – 雨天時のアーク溶接作業で感電した災害

一人親方あんしん労災 – 感電の労災事例

雨天時のアーク溶接作業で感電した災害


発生状況

本件の災害は、建設現場で、枠組み足場に腰を下ろした状態で、組み上げられた鉄筋にラスという金網状のコンクリート打設用下地に、交流アーク溶接機を用いて取り付ける作業を行っている時に発生した。

作業をしている途中で雨が降り出したため、同僚と2人で作業場所をシートで覆う作業をした、この際、雨で被災者の作業衣がずぶ濡れの状態となってしまった。その後、溶接作業を続行して、作業終了予定時刻が近づいてきたため、同僚が声をかけようと振り返ったところ、被災者が足場板の上に仰向けに倒れ、その右手付近に溶接棒ホルダーが溶接棒の取り付けられたままころがっているのを発見したもの。

災害調査の結果、被災者の体には,かなりの高電流が流れたことを示すような火傷があり、、着用していた皮手袋と作業衣にいずれも電流によるものと思われる焼け焦げがあることが判明した。この状況から判断すると、被災者が枠組み足場に腰を下ろした状態で、胸を枠組み足場の筋かいにもたれ掛けた状態で溶接作業を行っていた際に、溶接棒に触れて感電したものと思われる。

また、使用していた交流アーク溶接機には自動電撃防止装置が内蔵されており、試験の結果、その機能は、何も異常はなかった。ただし、この自動電撃防止装置は高抵抗始動型のもので、溶接をしていない状態では溶接棒と溶接母材等アース側との間の出力電圧は17Vであるが、溶接棒が母材に触れるなどして溶接棒とアース側との間の電気抵抗が当該自動電撃防止装置の始動感度である327Ω以下になると、出力電圧が80Vに上昇し、逆に溶接棒が母材から離れてアーク電流が減少すると約1秒後に17Vに切り替わる機能になっていることが分かった。

原因・対策

災害の原因は、感電による生命の危険は、主に体内を流れる電流の大きさと時間に左右されるので200mAの電流が流れれば、約2秒で死に至ることが一般的に知られている。

一方、体内を流れる電流の大きさは、人体や着衣の電気抵抗の大きさで決まるので、通常の着衣が乾燥した状態では、人体抵抗は10,000Ω程度であるが、着衣が濡れるとこの25分の1以下に減少してしまい、また皮手袋や衣服の抵抗は無視できるくらい小さくなる。災害発生時の被災者の体の抵抗は水に濡れて327Ω以下となっていたため、溶接棒に触れた瞬間、出力電圧が80Vとなり、250mA程度以上の電流が体内を流れて死に至ったものと思われる。

アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等の業務を行う作業者には、事前に特別教育を行わなければならないことになっていたが、被災者はこれを受けておらず、アーク溶接の着衣が濡れたことでの危険性、自動電撃防止装置の特徴について十分な知識を持っていなかったことも災害の原因の大きな要因だと考えられる。

災害防止には、自動電撃防止装置は、溶接作業場所の環境、母材の状態等に応じて、低抵抗始動型、2オーム未満のものと高抵抗始動型で2~500Ωのものとを使い分けることとして、降雨、雷の発生等の天候による作業環境の大幅な変化にも配慮した作業工程を作成するとともに、的確な指示が行えるよう安全管理体制を整備することにした。

更に、交流アーク溶接作業において、作業場所が普段の体勢と違うときは、溶接棒を溶接棒ホルダーから外すことにさせた。最後に作業に当たるものには、特別教育はじめ必要な教育を行うことにして対策をした。

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一人親方あんしん労災 – 伐倒木の下敷きとなり死亡した災害

一人親方あんしん労災 – 崩壊、倒壊の労災事例

伐倒木の下敷きとなり死亡した災害


発生状況

災害が発生した、伐木、搬出の作業は事業場の代表者Aと、伐木を行う作業者Bおよび搬出等の作業を行う作業者C、D、Eの3名、合わせて合計5名で行っていた。災害が発生した当日は、伐木作業を行うBがケヤキ高さ1.2メートルの高さで幹回りが1.43メートル、高さ25メートルの伐倒作業と、玉切り作業をして、A、C、D、Eが既に伐倒され、玉切りされてところどころに集められている木材を、トラックで現場から運び出す作業を行うことになっていた。

作業者DとEは、遅れておりまだ現場に来ていなかったが、A、B、Cは午前8時頃から作業を開始していた。DとEは少し遅れて、午前8時10分頃現場に到着した。伐木作業をするBは既にケヤキをチェーンソーで切りはじめており、隣接木の枝がからんで山側(東の方向)へは倒せないのに気がつき、近くに来ていたAに伐倒方向について、相談した。

この時Aは、DとEが60メートルほど下の林道まで到着しているのを見たが、BはDとEが近づいているのに気がついていなかった。相談の結果、伐倒方向は南の林道の方向にすることとなり、Bは近くにいたAと建設機械のオペレーターで積み込み作業を行うCが山側に退避したことを確認して、午前8時30分頃から再度伐倒作業を始めた。

伐倒後Bが、玉切りのため、この伐倒されたケヤキに近づいた時、ケヤキの枝の下敷きになっているDとEを発見した。Dは伐採した木で即死、Eは病院に収容した後死亡が確認された災害であった。

原因・対策

災害が発生した原因は、伐倒をする際に、事前に合図がなかったこと、また伐倒方向に作業者のいないことを、伐倒をする際に十分確認されないまま伐木が行われたこと。被災者が伐木作業を行っている危険な作業場所に近づいてしまっていたこと。被災者が保護ヘルメットでの安全対策をしていなかったことが原因と考えられる。

安全対策は、伐倒作業を行う際に、伐倒をする開始する合図を定めるとともに、関係作業者が周囲に居ないよう周知するとともに、伐倒する者に合図を実施させ、他の作業者が退避したことを確認した後でなければ伐倒させないことに改善した。

伐倒作業においては、他の作業者が作業場所付近に近づき、伐倒木が接触するおそれがあることから、作業開始前に十分打ち合わせを行い、作業の手順、伐木作業を行う場所等について関係者全員に周知すること。関係作業者に対し、伐採、造材等の作業における過去の災害事例を交えた安全教育を事前に実施すること。作業者全員に保護帽のヘルメット着用を徹底させることにした。

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一人親方あんしん労災 – 伐倒した木にかかっていた風倒木が倒れ、岩石が落下して被災者に激突する災害

一人親方あんしん労災 – 飛来、落下の労災事例

伐倒した木にかかっていた風倒木が倒れ、岩石が落下して被災者に激突する災害


発生状況

当社が山林所有者から請負契約で作業をした風倒木処理工事現場は二カ所あり、初めの工事現場は約10日間で工事を終了させ、翌日から災害の発生した現場での工事を開始しました、災害が発生したのは、作業開始当日で、当日の工事は、被災した者を含め5名の作業員が、チェンソーを使って、被害木の伐倒作業を開始した。

午前中の作業が終了し、お昼の休憩を1時間取り、午後の作業に入った被災者は傾斜約40度の、急傾斜地で作業中にかかり木になっている杉の処理作業を1人で始めたが、その後災害の発生したと思われる時間まで、1人で作業していたため事故の目撃者がいないため推測になるが、被災者は、かかり木(A)をそのままにして、杉のかかられ木(B)を伐倒したところ、根株の浮いていたかかり木(A)も作業中に一緒に倒れたと思われます。

この作業中に、かかり木(A)の根が食い込んでいた根株附近の岩を引張り、そのため動いた数個の岩石が傾斜を落下し被災者に激突したと思われる。落石に気が付いた他の作業員が、現場を確認したところ、倒れている被災者を発見した。保護帽のヘルメットは近くに転がっており、チェンソーは、エンジンがかかったまま被災者の足元にあった。

原因・対策

災害が発生した原因は、かかり木の状態と被害木の処理方法としてかかられ木を先に伐倒してしまったことで、伐倒木と共にかかり木も倒れてしまい、かかり木の根が岩を引張ってしまい岩石が傾斜を勢いよく落下して被災者に激突したと思われる。

対策は安全を考えた作業をすることを最優先にして、かかられ木を先に伐倒しないことと、けん引具(チルホール等)を用いて木を起したまま、重心の位置を確認しながら、安全を最優先にした、適切な伐倒方向を選択した後に、伐倒するか又は引き倒すことをする。また、作業を開始前に、作業指揮者を中心に事前に被害木の状況及び周囲の環境を良く見極めるとともに、安全を最優先した作業手順を選定するとともに作業に当たるようにすること。

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一人親方あんしん労災 – フォークリフトの転倒でヘッドガードと地面にはさまれ重傷を負った

一人親方あんしん労災 – 転倒の労災事例

フォークリフトの転倒でヘッドガードと地面にはさまれ重傷を負った


発生状況

被災者したEは、乙製材所から甲建材にトラックで部材を運搬する作業をしていました。災害が発生した当日は、午前8時30分頃、山を所有していたDが原木を搬入して、甲建材のAが木取り作業を開始しました。

乙製材所Bが帯のこぎりを使用し製材作業をしていました。乙製材所のBは補助作業者として、被災したEと製材発注者のCと山の所有者Dが作業した。その作業内容は、製材された部材の仕分けと製材時に出る廃材の整理作業等であった。作業員Bは、製材された部材を甲建材のトラックに積み込み作業中に、Bが作業した積載方法に問題があり、Eはフォークリフトで積み替え作業を行い、午後も引き続き製材の仕分け作業をしていた。

午後2時20分頃、CとDとEは、溜まった廃材を工場建屋内の廃材整理場所に整理し、廃材を結束した。被災者Eは、結束した廃材重さ約1.5トンをフォークリフトで吊り上げ、工場建屋から南に約30m離れた廃材置き場に運ぼうとした。被災したEは、フォークリフトを運転して廃材置き場の直前で転倒して、フォークリフトのヘッドガード左側後部支柱と地面との間にはさまれてしまいEは災害にあってしまった。フォークリフトが廃材を搬送していた路面は5度の傾斜があり、運転経路上に直径30cm、深さ、5cm位で、すり鉢状の窪みがあった。

原因・対策

廃材を運ぶフォークリフトの走行経路上に5度の傾斜があったこと。災害発生時に約1.5トンの廃材を積載して、走行中の事故とと推測され、廃材の積載状態、走行速度等は明らかになっていないが、走行経路、フォークリフトの速度によって偏荷重が作用するとともに、バランスと安定性を失い転倒したものと考えられる

更に路面状に窪みがあり、それにフォークリフトのタイヤが落ちて、その反動でバランスを崩し転倒したものと推測されている。被災者が当該事業場でフォークリフトの運転をすることは初めてであり、段差があるなどの路面状態には不慣れな面があったことが原因と考えられている。

作業開始前には、事前に作業関係者で安全に作業するための手順を打ち合わせるとともに、傾斜のある箇所での作業の安全性と、廃材を搬送し走行を行う場合は安全に作業する方法、走行経路を充分検討した上で作業を行うことを前提に作業し、フォークリフトを走行する路面はあった凹凸あるいは障害物のない作業スペースを良好な状態に保つとともに、フォークリフトを初心者に運転させる際には、予め運転経路の状況を把握させるとともに、事前に走行して走行に慣れさせることも必要である。

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